総合支援部日誌

今年度の授業から

 

 今年度もあとわずかとなりました。最後の日誌では、今年度行った自立活動の授業を振り返ってみたいと思います。

 自立活動専任は、各学年の「自立活動の時間における指導」の授業を担当しています。学年の担任と相談し、どの児童生徒の授業を担当するか決めているのですが、私は「身体の動き」に課題のある児童生徒を担当することが多いです。その授業の中からいくつか紹介します。

 

①チューブを使ったトレーニング。

 からだが硬い、または麻痺がある場合、リラックスできる姿勢(例えば仰臥位)で各部を動かしたりストレッチしたりします。繰り返すうちに、力を抜いて自分で動かすことができるようになることが多いです。上手に緩めることができたということなのですが、それで終わりではなく、からだを使っていくためには入力(力を入れる)も大切と考え取り組んだ授業です。あれこれ教材を考えたり試したりしたのですが、最終的に使うことになったのはトレーニングチューブです。椅子に写真のように付け、座った姿勢で背中を伸ばし、上や前に引くことで腕や体幹を鍛えられると考えました。

 

 

  単なる訓練にならないよう、iPadとプロジェクターで活動の様子を映し、自分達のやっている動きや姿勢を見ながら行いました。また、教員や友達との引っ張りっこなどの活動もいれ、楽しい雰囲気で行えるようにしました。

 トレーニングチューブは今年度初めて授業に取り入れてみましたが、100円ショップやホームセンターで手軽に手に入り、工夫次第ではいろいろ使えそうです。

 

②足跡シートを使って歩く活動。

 あるグループで、筋力アップと股関節や足首の柔軟性を高めるためランジを行なってみたところ、前後に脚を開くことが苦手な児童が多いことに気付きました。

 

 

 

  そこで、脚を大きく踏み出して歩く活動に取り組みました。初めは床に足跡板を置いて行なっていたのですが、活動中に足跡版がずれてしまうので、10メートルほどのシートに直接足型を描いてその上を歩くようにしました。足型の幅は35cm45cm程の2種類を作りました。特に45cm幅の方は多くの児童が苦労していましたが、教員と手をつないでゆっくり行うように促すと、一人で行うときよりも、からだを安定させて大きく脚を踏み出すことができました。また、初めは難しくても、教員と一緒に何回か行う中で、足型を意識して踏み出すことができるようになった児童もいました。

この授業では、「ひとりで行う」ことよりも、支援を受けながら各部をしっかり動かすことを大切にしました。からだの硬さやバランス感覚、ボディイメージなどの弱さから、私達が思っている以上に苦労してからだを動かしている児童生徒がいます。特に「身体の動き」の課題に取り組むときは、安心して取り組めるように支援していくことが必要です。その中で、自らからだを動かし、次第にできなかったことができるようになっていくのだと思います。

 

 

③ストレッチポール

 ①②の授業は今年度始めて取り組んだ授業ですが、最後に、毎年取り組んでいるストレッチポールの様子を紹介します。

 

 

  ストレッチポールは円柱状のトレーニング器具で、上の図のように乗り腕や脚を動かすことで、腰や背中、肩、股関節などを伸ばしたり緩めたりすることができます。今年度、中学部、高等部では週2日ほど行ってきましたが、以前は乗れなかった生徒が乗れるようになったり、教員の支えが必要だった生徒がひとりで乗れるようになったりと、どの生徒も上手に乗れるようになりました。15~20分ほどの取り組みでしたが、継続することと、今は難しいことでも「できない」と捉えやめてしまうのではなく、時々取り組んでみることが大切だと考えさせられました。

 以上3つの取り組みを紹介しましたが、他にも自分なりに考えたり工夫したりしながら授業を行ってきました。今年度の授業はもう終わりましたが、これから教材や資料の整理をしながら1年間を振り返り、次の授業のことを考えていきたいと思います。

 

これで、今年度の総合支援部日誌は終了いたします。あまり更新できませんでしたが、1年間ご覧いただきありがとうございました。

自立活動専任 中島卓也

0

ボランティア育成講座を開催して

平成30年度はボランティア育成講座に8名の方が参加しました。

ボランティア育成講座は

第1日目

1 開講式

2 講義

(1)「障がいについて」(2)特別支援教育について

(3)「上尾かしの木特別支援学校について」

(4)「ボランティアのお力」って

3 質問・感想

第2日目

  小学部、中学部、高等部のクラスに半日(9:0012:00)入りボランティア体験

第3日目

  1 小学部、中学部、高等部のクラスに1日(9:0015:00)入りボランティア体験

  2 閉講式

の3日間で行います。

 第1日目の講義「障がいについて」の中で、

(1)目隠しした人への行動支援について(黙ったままで移動を促したり、予告をしながら移動を促し、支援をしてもらう側の気持ちを感じたり、お互いに話し合ったりします)

(2)軍手を2枚はめて折り紙を折る。(折る行動をせかしたり、折ることの苦手さの気持ちを汲み取りながら言葉かけをしたりしながら、手指の操作性の苦手な児童・生徒の気持ちを感じてもらいどのような言葉かけがいいかなどを伝え合ったりします)

(3)相手に言葉のみの指示で図形を描いてもらう。(書いてもらいたい図形が上手く伝わらない体験を通して、言葉で伝えることの難しさを知ったり、相手に分かる言葉かけとは何か、また相手に分かる伝え方とはどうしたらいいかを体験します)

の3つの体験を入れています。この体験をとおして児童生徒の困り感の一部を知ってもらうことができればありがたいと思っています。


 また、ボランティアの方々には、講義「ボランティアのお力」っての中で、かかわる際の重要なポイントは3+2!

    「安全」・「危機管理」という視点で危険が無いよう環境面の配慮や本人に関る時の配慮、事前に危機を予測して支援を考えるなどの話をしました。

    「コミュニケーション」という視点で子どもの特性や能力に応じた働きかけ→コミュニケーションの手段(言葉、文字、絵や写真、表情、まなざし、身振り手振り、指差しなどの色々な手段があること)を伝えました。また、一度に伝える適切な量や注意を引き付けたり、間をとっての伝え方、強弱をつけての伝え方など、本人にとって分かり易い伝え方が必要であると話をしました。

    「集団参加」という視点では、集団が苦手な児童生徒がいた場合の関わり方をお話しました。

また、「本人の能力に合った働きかけ」や「実際の生活年齢にあった働きかけ」が必要なことを伝えました。


 ボランティアの方のお力を借りて、「子どもたちにとって」「学校(職員)にとって」「ボランティアの方々にとって」よりよい関係を作っていくことで、共生社会の実現に一歩近づけたらと考えています。

 そのためにも、多くの方々が無理なくボランティアを継続して行ってくれることで、本校の児童生徒を理解していってくれたらと思います。

 

 今年度もこの講座を修了した方全員が本校のボランティアとして登録してくださいました。ありがとうございました。末永く、上尾かしの木特別支援学校のボランティアとして、本校の児童生徒と関っていただければ幸いです。今後ともよろしくおねがいします。


                                       総合支援部 古関

 

0

「噛むこと」を育てるために~安全で楽しい食事をめざして~

 本校では、今年度も摂食指導の外部専門家の先生に来ていただき、子どもたちの食事の指導についての相談支援をお願いしています。また、摂食指導に関する研修会の講師もお願いしています。

 これまでの相談では、 

  〇細かく刻んだ物を食べているが、どのようにしたら噛むようになるか。        

  〇一口大にしているが、どのようにしたら噛むようになるか。
  〇詰め込んでしまうが、どのようにしたら詰め込まずに適量を噛むことができるよういなるか。
  〇丸のみしてしまっているが、どのようにしたら噛むようになるか。

 ・・・など、「噛むこと」(咀しゃく)に関する相談が多くありました。

 

 今回は、これまでの相談支援の中で、外部専門家の先生よりいただいた指導助言や研修会で教えていただいた「噛むこと」(咀しゃく)を育てるために大切なこと・必要なことについてお伝えいたします。

「噛む」(咀しゃく)こととは・・・

・食物を前歯と唇を閉じて取り込み、食物の硬さや大きさを感じて、「噛む」(咀しゃく)という動きが引き出されます。

・取り込んだ食物を、舌を横に動かして小臼歯(犬歯の後ろ・横の歯)にのせます。

・小臼歯にのった食物を、舌とほほではさみながら歯を動かしてすりつぶし、だ液と混ぜ合わせ飲み込みしやすい状態にします。

・だ液と混ぜ合わされた食物を舌の中央に集めます。

「噛む」ためには、口を閉じることが重要です

・噛む(咀しゃく)時、舌はとても複雑な動きをします。舌が複雑な動きをするためには、口を閉じて口の中を狭くすることが必要です。

・噛む(咀しゃく)時に口が開いていると、噛み続けることが難しく、十分にすりつぶされずに食物がすぐ喉の方に送られてしまいます。

「噛む」ようになるためには、食物の硬さや大きさなど(物性)を感じることが重要です
 ← 口を閉じている方が感覚を感知しやすい

・食物を口を閉じて取り込んだ時の、歯根膜からの情報や舌先(敏感な部分)、唇、口の中の上の部分や口の中の他の部分の触感覚によって、食物の硬さや大きさなどを感じます。

・口を閉じることが不十分だったり、一口大ばかり食べていると、噛むべき硬さなのか、大きさなのか、噛まなくてもよいのかなど、食物の硬さや大きさなどを感じることができなくなります。

・口の中の触感覚や舌で、だ液と混ざり合いかたまりができるぐらいかみ砕くことができたかどうか、もっと噛み砕いた方がよいかなどを感じます。


きざみ食では、「噛む力」(咀しゃく)は育たない
・きざみ食は、口の中でバラバラになってしまい、噛みにくい場合があります(だ液と混ぜ合わせにくい)。

・きざみ食は、だ液と混ぜ合わされた食物を舌の中央に集めることが難しいです。

・だ液と混ぜ合わされた食物を舌の中央に集めることができないと、飲み込むことが難しくなります。
・きざみ食は、スプーンですくい、かじり取る必要がなく、そのまま口の中に入れてしまうので、食物の硬さや大きさなどを感じ取ることができません。

「一口大」ばかりでは、「噛む力」(咀しゃく)は育たない

・食物がすべて一口大の大きさだと、そのまま口の中に入れることができてしまうため、前歯を使わないで食べることになります。

・前歯を使わないと、歯根膜に感覚が伝わらず、食物の硬さ・大きさなどを感じることができないので、噛むべきものという情報が入らず、丸のみとなってしまいます。

★指導のポイント★
◇噛む力は「介助食べ」で培われます
・自分で道具を使って食べてはいるけど「噛むこと」に課題がある場合、自分で食べるだけでは、噛む力を育てることは難しいです。

・その子にとって適切な量を適切な位置に置かれることが必要です。
・適切な位置(舌と口の中の上の部分ではさむ)に置かれることで、食物の硬さや大きさなどを感じることができます。食物の硬さや大きさなどを感じることで、噛む(咀しゃく)動きが引き出されます。


◇前歯と唇を使って「かじり取り」の練習をする・・・自分にとっての「一口量」を学習する

・歯だけではなく、口を閉じることを促がして(口を閉じるという力を育てる)、歯根膜からの情報や舌先(敏感な部分)、唇(敏感な中央部)、口の中の上の部分や他の部分の触感覚によって、食物の硬さや大きさなどを感じやすくします。

・介助者は、かじり取っても大丈夫な量を残して食物を持ち、子どもにかじり取りを促します。硬すぎず、柔らかすぎず、かじりとりやすく調理した物や食材を使用します。例:エビセン(かじった感覚が伝わりやすく、だ液と混ざりやすい)、適度な硬さにゆでたスティック状の人参や大根など
・「かじり取り」の練習をおこなっていくことで、自分にとっての「一口量」が感覚としてわかるようになります。
・「一口量」がわかることで、詰め込むことが減り、硬すぎない食物であれば、一口大に切ることなく自分でかじり取ることができるようになります。


 子どもたちの食事の様子から、何が課題なのか、さらに上手に食べることができるようになるためにはどのような指導・支援が良いのかを考える時、『食べる機能(摂食・嚥下)のメカニズム』や『摂食機能の発達の順序』を知っていることは必要不可欠です。その上で“子どもたち一人一人の障害の特性や個性に応じて指導方法を考えることが必要である”というお話を外部専門家の先生より伺いました。子どもたち一人一人の課題を押さえ、その課題に応じた指導・支援ができるよう、摂食指導に関する研修を積み重ねていかなくてはならないと改めて考えます。
 
 一口大に切って食べている・・・、詰め込んでしまう・・・、丸のみしてしまう・・・といった場合がありましたら、ぜひ「かじり取り」をしてみてください。自分にとっての一口量を知る学習となり、「噛むこと」につながるひとつになると思います。


 

0

キャリア教育と進路指導

 今年度も2ヶ月が過ぎました。少し遅くなりましたが、今年度最初の総合支援部日誌を掲載します。

 この総合支援部日誌は、総合支援部メンバーが、特別支援教育にかかわることや役立つことなどの情報を伝えていこうと4年前から始まったものです。

 今回は「キャリア教育」と「進路指導」について、ふれていきたいと思います

 ここ数年でだいぶ定着してきた「キャリア教育」は、本校の教育の中でも重要な位置を占めていますが、一般の方々には未だに「進路指導」と混同されがちな面があります。

 「キャリア教育」とは『一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育』と定義されています。

 では「進路指導」は、というと『生徒が自らの生き方を考え、将来に対する目的意識を持ち、自らの意志と責任で進路を決定する能力・態度を身に付けることができるよう、指導・援助する』とあります。

 つまり定義や概念としては「キャリア教育」と「進路指導」には共通するところが多く、目指す所もほぼ同じと言えるでしょう。

 しかし「進路指導」は『生徒が』とされていることから、対象が中学校と高等学校に限定されているのに対し、「キャリア教育」は初等教育前の幼児教育の段階から高等教育までの様々な教育機関での実践にとどまらず、成人も対象としているのが一番の違いでしょう。

 確かに「進路指導」は「キャリア教育」の中核となるべきものですが、あくまでも「キャリア教育」の一部であり「キャリア教育=進路指導」ではありません。

 更に「進路指導」は、もともとの理念から外れ『進路決定するための指導』つまりは『出口指導』と思われがちで、これを「キャリア教育」と結びつけてしまうことは最も避けなければならない事です。

 「キャリア教育」を正しく理解してもらいその中枢を担うためにも、「進路指導」においては進路先の選択や決定にとどまらず、将来、社会人・職業人として自立していけるような人材を育てる「生き方の指導」もしていかなければ、と強く思います。

                                         (文責:進路指導主事 伊藤)


0